8人が本棚に入れています
本棚に追加
「ぼ、僕は、あなたのその太く、硬く、逞しい上腕二頭筋に滅入っておりました。そ、その……。もしよかったら……」
「……」
「やらないか?」
「おい、萌実。帰るぞ」
「え~! あいつ吹っ飛ばしてよ~」
「いや、あいつに関わっちゃいけねえ」
俺は、肉体に何のダメージも無かったという代償に、何かとてつもなく大切なモノを失った気がした。
男としてのプライドというものだろうか。
「You lose……」
ゲーム機から無残な音が響き渡る。
そう、俺は負けた。全てに負けた。
だが、俺は特にダメージを受けたわけではない。これぐらいは序の口。過去の敗北に比べれば……。
俺は負け組。つくづくそう思う。誰かに言われたわけではない。自分でそう思っている。
だから俺は憎い。悔しい。妬ましい。
勝ち組。リア充。ハーゲンダッツぐらいでいちいち騒ぐんじゃねえよとか平気で言える奴。おい、暗くて足元が見えぬ。金を燃やせ。とか普通に言える奴。
全てが俺の敵。
今自分が幸せだと感じてる奴。
全てが俺の敵。
俺の名はZERO(本名 田中 太郎)。
幸せクラッシャーZERO。
最初のコメントを投稿しよう!