〓第二章〓

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『そろそろ…出ようか』 そう言う彼に付いて カラオケBOXを出た。 言葉少なに ホテル街を歩いてゆく。 一件のホテルに入った。 『心配しないでね。何もしないから。ただ寝るだけ』 ホテルの部屋のドアに手をかけながら 一瞬止まり.私の目を見つめそう言った。 部屋に入ると ダブルベッドに少し大きめのソファ-. テーブルにテレビ.ミニ冷蔵庫が備え付けられていた。 2人で冷蔵庫に入ってたお酒をあける。 彼の故郷の話になった。 彼は島根県出身の長男で 東京に出てきて働きながら 実家に仕送りしてると言う。 実家には両親と.歳の離れたまだ学生の弟がいるらしい。 『仕送りなんて…大変ね』 『あっちはあまり仕事もないし。結構俺みたく東京に出てきて働いてるヤツも多いんだ』 『そうなの』 『親父が数年前に癌になって……年齢も年寄りだから働けないし.母親も体が丈夫じゃないからね。俺が稼がないと…』 見た目じゃわからない 彼の苦労を垣間見た気がした。 『私なんて…大学出て少しだけ働いて…すぐに彼と結婚したから何も苦労してきてないわ』 『そこがまた君の魅力なのかも(笑)いいんだょ。それで…さ』 そう言うと私を見つめ 優しく微笑んだ。 『そろそろ.寝ようか』 彼の言葉に体を固くした。
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