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またわざとらしくため息をついてみせると、竹田は続けて言った。
「だから、中村さんと仲良くなりたいんだよ。
いつも周りには見せない中村さんの顔が知りたくて。」
私は顔が急に熱くなった。
しっかりと見据えていた竹田の目から、背けるように下を向いた。
「…冗談ならやめてよ…」
「冗談じゃないし」
そう言って竹田は私を抱き寄せた。
竹田の胸が顔にあたって、静かな空間に、彼の鼓動が響く。
「冗談で好きなんて、俺言ったことない。」
「…」
どうしたらいいのかわからないこの状況を、人は“ピンチ”だと言うのだろうか。
「私は…わからないよ。」
それを言うだけで、精一杯だった。
だけど、竹田の鼓動を聞くと、驚くほど安心した。
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