壱話

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pipipipipipi! 目覚ましの音が部屋に響く その部屋には一人の少女が眠っていた。 この物語の主人公―――櫻木深月である。 「ん…またあの夢か」 深月は暫く窓から差し込む光に目を細くし、学校行かなきゃ…と呟いて布団から出る。 そして寝間着を脱いで新しい制服に手をかけた。 なぜ新しいかというとあることが原因で転校したからだ。 身体中には痣がたくさんある。 深月は前の学校ではイジメ、親からは虐待を受けていた。 それを見かねた祖父母が私を引き取ったのだ。 制服に伸ばしていた手を止める。 深月は夢のことを思いだしていた。 それは突然始まったんだ。 別に私が何かしたわけじゃない。 「思えば…あの頃からすべてを諦めていたのかもしれないね…ま、もうどうでもいいか。どうせ私には必要としてくれる人なんかいやしないんだから」 そう言って深月は自嘲して笑った。 その笑みは、どこか寂しげで、それでいて儚さがあった。
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