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宮瀬 衣苳(みやせ いぶき)。
この春休みが終われば高校二年生になる。
「(き、緊張する…)。」
今、私はものすごく緊張している。それはもう人生で一番の緊張かもしれない。…ちょっと大袈裟かも?いや、でもとにかく心臓がやばい。爆発するかも、って勢い。
ここはちょっと高そうな外見をしていた20階建てのマンションの8階で、私は820号室の部屋の前で突っ立っていた。インターホンを押す手がずっと戸惑っていて、押せないのだ。
「よ、よし…っ!」
いつまでもこうしていても仕方がない、とやっとの思いでそのボタンを押した。微かに聞こえるインターホンの音と、カタカタとドアの奥からする物音に鼓動がさらに激しく音を奏でた。あーもう、どうしよう!?
「はい」
「あっ、い、衣苳!」
「おー、やっときたか。入れ入れ」
出て来たのはだらし無さ炸裂のグレーのスウェットに煙草を加えた男の人。なんだかさっきまでの緊張が崩れていく音がして、私は招かれるままそのドアの奥に入った。
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