0人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前荷物多過ぎだろ」
「女の子はこんなもんなんですぅ」
ぷうっと頬を膨らませるその姿は本当に幼い頃のまんまだった。成長しねーなこいつは。
宮瀬 結生(みやせ ゆうき)。
あと数年で三十路になる26歳、会社員の俺はこの春から10歳も離れた〝妹〟との生活が始まろうとしている。
父さんは俺が13歳の時、事故で亡くなった。以来、母さんが俺と妹を一人で育ててくれていたが元々母さんはキャリアウーマンで、金には困らなかった。そして俺は高校卒業後、社会人になって家を出た。
「お前の部屋はあっちな」
「はーい」
が、仕事が生き甲斐な母さんは今年の春から海外での仕事が始まり、まだ高校生の妹を連れていくのは可哀相だからとりあえず俺の所から高校に通わせてほしい、と頼まれたわけだ。
「わ、思ったより広い」
「自由に使え。部屋には鍵もつけといたから、はい、鍵」
「ありがとう、お兄ちゃん」
幸いなことに今、俺が住んでいる場所から妹の通っている高校は電車で行ける距離にあった。断る理由もなければ、確かにまだ高校生の妹に海外に行かせるのは俺もどうかと思ったから、こうして妹との生活が始まったわけだ。
「荷物片付けておけよ。明後日から学校だろ?」
「うん。」
たくさんある段ボール。
本当に荷物多過ぎだろ。何がそんなにも入ってんだ全く。
--------------------------
最初のコメントを投稿しよう!