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食べるものも食べ、ようやくみんなが落ち着いた頃、嗣郎さんが話を振ってきた。多分これが今日の本題だったんだと思う。
「…で?お前達の本家の様子はどんな感じだった?」
嗣郎さんの言葉に、全員の視線が僕に集中した。今正におはぎの最後の一口を運ぼうとしていたとこだったけど、その手は止めざるをえない。
「な、何っ…」
「俺の父さんも奏哥に会いたいってさ!是非自分の代で二人が出逢うの見たかったって!」
「私の家も同じですね。やっと待ち望んだ時が来たのですから。皆立ち会えなくて不満そうでした」
「……ぇ、あ…それって…」
い、いい事なのかなっ…
「今度俺達の家に遊びに来いよな!」
熙斗にバシッ!と背中を叩かれて、箸で摘まんだままのおはぎがテーブルに転がった。
「近い内に顔見せでもするか」
麒麟が入れた熱いお茶を飲みながら、嗣郎さんが言う。顔見せって……何か大袈裟過ぎないかなっ…
「我とそなたのために、一族の運命をかけてくれた者達だ。皆そなたを待っておったのだからな…、会ってやってくれ」
「う、うんっ…それは…もちろんっ…ぼ、僕でよければ…」
そうだよ。魄皇の言うことはよく分かる。むしろ会ってちゃんとお礼をするのが僕の義務だ。でも…こんなのがって思われたら……どうしよう…。
「大丈夫だ」
魄皇にそっと髪を撫でられた。その手はそのまま頬を滑り、僕の顎を捉える。
「そなたはもっと自信を持て」
僕の心を見透かしたみたいに魄皇がそう言った。そして、持ち上げられた顎を引かれバランスを崩しそうになった隙に、魄皇の唇が僕に重なった。
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