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「あ、あのっ…他のみんなは…?」
「……元旦でそれぞれ本家に帰ってる。そろそろ帰ってくんだろ」
「ほ、ほ…本家…?」
てっきり二人はずっとここで暮らしてるんだって思い込んでたけど……、そりゃそうか。二人にだって家族がいて、その家族が住む家だってあるよね。
「本家って―――」
「んなことより…」
遮られた。
何だか嗣郎さんの目付きがヤバい。ギラギラして怖いものになってく。一歩引いて距離を取ろうした、次の瞬間―――。
「わぁッ…!ちょっ、嗣郎さん!?」
開いた襖の隙間から居間へと押し倒された。俯せに倒れた僕の上に、嗣郎さんが全体重をかけて覆い被さってくる。ひ弱な僕が暴れても、全く怯まない。
「嗣郎さんっ…ど、退いてよ!」
「―――奏哥…」
名前を呼んだ嗣郎さんの声が、耳の直ぐ横で聞こえて焦る。
な、何でこんなに密着するの!?
「―――相変わらず美味そうな匂いさせてんなぁ」
「やだ…!ま、またその話しっ!?」
首筋から耳の付け根辺りを、嗣郎さんがすんすんと鼻を鳴らしながら往復しているのが分かる。背中がゾワゾワして仕方がない。
「だが……一段と濃い匂いになったのは何でだ?退院後にうちに来た時はこんな匂いさせてなかったぜ」
「し、知らないよッ…!」
そもそも本当にそんな匂いがしてるのかも分からないのに!違いなんて僕に分かるはずがない―――と、思ったんだけど…
「あれから魄皇と何かあったな?」
最後は疑問符なのに、何故か確信めいた言い方。ドキリとして振り返れば、嗣郎さんがニタニタと笑っている。
退院後、一番大きな出来事と言えば、僕にもさすがに思い当たる。
初めて…魄皇と、一つになったコト。
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