翼持つもの(1)

4/7
前へ
/52ページ
次へ
 バートは自分が身につけている剣を確認した。バートの持つ剣はバートくらいの歳の少年が扱うには少々大きすぎる剣だった。しかし、バートは片手で軽々と振り回すことができる。剣は年代ものといった感じで良く手入れされ使い込まれていた。バートはこの剣を五年前の自分の誕生日に父クラヴィスから譲り受けた。十二歳のときだった。  バートは夏生まれの火属性で、火の精霊を自由に扱える――はずだった。しかしバートは昔からこの「精霊の扱い」が苦手だった。戦う力としては、父親譲りの剣技の腕前を持っていたので、特に精霊を扱うための修業は積んでこなかったのだ。 「でも、バート。せっかくだから、『精霊』も使えたほうが、良い」  バートの父、クラヴィスはそう言った。そして『精霊剣』について教えてくれた。精霊を剣に宿らせる。すると、意識せずとも剣を振るえば精霊の力が発動するのだ。  バートはこの新しい力に夢中になった。毎日剣術と精霊剣の修業を欠かさなかった。父親も良く修業に付き合ってくれた。近所の友人と決闘の真似事なんかも良くした。  一年後。父クラヴィスは突然家を出たきり帰ってこなかった。ピアン王国随一の将軍であった父が。ピアン王宮は大騒ぎになった。捜索隊も結成されたりしたが、クラヴィスは二度と、ピアン王宮に、バートと母の待つ家には帰ってこなかった。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加