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そして今日の昼過ぎのことだった。突然、サウスポートの兵士がピアン王宮に駆け込んできた。兵士の話によると、今朝、サウスポートの町が正体不明の敵の襲撃を受けたのだという。サウスポートはピアン王国最南の町である。ピアンが接している他国はピアンの北に位置する山脈を挟んだキグリス王国だけだ。南の海にしか面していないサウスポートが「襲われる」なんて普通に考えてまずありえない話だった。
「正体不明……ってどういうことだ?」
バートはその兵士に尋ねてみた。
「バート様。やつら……、もしかしたら、いえきっと、『人間』ではないと思われます」
「何……だって」
「やつらは背中に赤い翼を生やしていて、自在に空を駆け巡ります。そして、どこからともなく突如出現し、大軍で港町を襲ったのです」
「赤い翼……」
「皆、彼らを『異世界から来た異形の者』と呼んでいます」
「…………」
突然そんな話を聞かされて、バートは言葉を失った。人間ではない者。赤い翼を持つ異形の者。そんなやつらが、どこからともなく突如出現し、大軍で港町を襲った?
「……ひとつ聞いて良いか」
バートは混乱した頭を抱えながら、兵士に尋ねた。
「はい」
「『異形の者』ってのは、わかった。でもなんで『異世界から来た』んだ? 異世界って……」
「それは……、きっと」
バートの傍らで一緒に話を聞いていたピアン王女サラが口を開いた。
「二千年前の伝説に、なぞらえているのね?」
「そのとおりです」兵士はうなずいた。
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