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ユリト…side
ふぅ…
あの王女は嫌いだ。
俺は今、帝都を出て西の山岳地帯に向かっている途中だ。
クリク「そてぃーひとりでだいじょうぶ?」
ユリト「ん?
クリクほどソティーは、甘えん坊じゃないから大丈夫でしょ。」
クリク「ぼくはあまえんぼうじゃない。」
腹にしっかり引っ付いたままのクリクは不機嫌そうに言う。
できればクリクも置いて来たかったが、クリクは頑なに拒んだ。
これを甘えん坊と言わずなんという。
ユリト「とにかく危ないから絶対に離れるなよ?」
クリク「うん。」
それはそうと、もう集落が見えてきたな。
普通に喋ってたけど相当なスピードで飛んでいた。
例えるならあれだ。
強風で息が出来なくなるぐらいの速度だ。
俺は集落の手前に降りて、服を着るとすぐに集落へ向かう。
国の食糧の五割をまかなっている土地だけに畑ばかりだ。
嫌いな風景ではないがな。
ユリト「あの。すみません。」
俺はとりあえず畑を耕していた若い男性に声をかける。
「珍しいなぁ~。
旅の人かぁ~?」
ユリト「いえ。クフィルリュウの調査で来たのですが。
村長様の自宅はどちらでしょうか?」
何故あえて討伐ではなく、調査と言ったのか。
理由を言うとクフィルリュウは、しばしば家族愛の象徴として捉えられる事があるからだ。
「ほほぉ~。
『調査』ですか。
では此方へどうぞぉ~。」
若い男性は調査を強調して、にこりと笑った。
そしてゆっくりと歩き出す。
討伐なんていったらどんな顔をされていたことか…
「所で頭の上の帽子は珍しいですねぇ~。」
帽子…
こんなにでかいのに、普通帽子と見間違えるか?
クリク「ぼくはぼうしじゃないよ。
くりくってなまえがあるんだ。」
クリクは俺の頭の上で胸を張る動作をしたらしい。
「おひぁ~!
帽子が喋ったぁ~!」
そしてクリクを珍しそうに見ていた男性は、後ろにひっくり返ってしまう。
帽子じゃなくて竜ね。竜。
ユリト「こいつは俺の相棒のクリクです。」
「ひぇ~!
こいつは竜の赤子じゃねぇかぁ~!
たまげたぁ。たまげたぁ。」
この地方特有の訛なのか?
だいぶゆっくりな口調だな。
そうして遠くに村長の家らしき屋敷が見えてくる。
ここら辺の建築は古い日本家屋に似ているな。
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