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ユリト「クリク!落ち着けぇ~!」
クリク「きゅあああぁぁぁ!」
全く耳をかさないようだ。
私は耐えきれず防音結界を張り、自分の身を守る事に専念した。
結界の外では泣き続けるクリクを宥めるユリト。
実に大変そうだ。
やはりグロークの生まれ変わりのため、本質的な所は変わらないようだ。
あいつは一度泣き出すとジャニアリカが宥めるまで、ずっと泣いたままだったからな。
当時竜族第2位の実力と権力を持っていた者が、重度の泣き虫で甘えん坊だったとは想像できない。
それの分身のユリトが泣き虫で甘えん坊じゃないのは意外だが…
もしかするとこらえているのかも知れないな。
ん?
どうやら落ち着いたようだ。
私は結界を解き2人に近付く。
ユリトは本来の姿のクリクの頭を抱きしめ、大丈夫だからと声をかけながら撫でている。
ユリト「お前がもうこんなに成長してるとは思わなかったよ。」
はっきり言って竜族は生後数週間で成体と同じ大きさまで成長する。
ユリトは知らなかったらしい。
ユリト「さてと。どうやらクリクは十分成長してたみたいだし、早速『くんれん』を始めるか!」
クリク「うん!」
死にかけた筈のユリトは輝かしく笑い、クリクは念願の訓練が出来るとなってはしゃいでいる。
ミア「ユリト。
体はもう大丈夫か?」
ユリト「おう。心配かけたな。」
まぁ。無事ならいいさ。
ユリトの生命力にはいつも驚かされるな。
ユリトはまず人化の方法を教えているらしい。
ソティー達がいまのクリクを見たらまず驚くな。
私はそんな親子のような2人を眺めて、自然と頬が緩んだ。
ここにジャニアリカがいたらさぞかし楽しかっただろうに…
私は暫くの間、薄れゆく記憶の中をぼんやり漂っていた。
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