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ルミク…side
私はため息をつくしかなく、その度に気持ちが落ち込んでくる。
理由は前回の試験(もはや大会になっていたが…)で魔力切れを起こしてた時の感覚が、いまだに体に残っているからだ。
絶大な喪失感が全身を包み、それでいて苦しく心身が死を垣間見たからだ。
恐怖でありながらも抗う事無く確実に近付いた。
しかし確かに私を引き戻す光があった事も確かだ。
ユリト「大丈夫か?」
ルミク「ん。大丈夫。
早く始めようか。
みんな待ってるし。」
ユリトはそうだなと苦笑いしながら少し離れる。
ユリト「全力で来いよ。」
彼は私を照らす光だ…
大丈夫。
ルミク「言われなくても!
アデラガラス!」
私は地面を蹴り、それと同時に傀儡魔術を行使する。
私と併走して地面より湧き出る金属人形。
その鋭利な腕をユリトに突き立てさせる。
私も勿論魔武器でユリトを狙う。
ユリト「ほぅ…
なかなかだな。」
ユリトは巨剣を2つに分けると器用に3人分の剣を受け流している。
私はもはや遊ばれていた。
ユリト「今ルミクは3人いるんだ。
3対1で必要な事はなんだ。」
必要な事?
複数の味方がいる中で、どうやって1人の人間を攻めるかって事かな?
うーん…
ゴス!
ルミク「うっ!」
ユリトの肘鉄が、わき腹にもろに入ってしまった。
ユリトは私が攻撃された事により、動きが鈍くなった金属人形を叩き割る。
ユリト「駄目だなぁ。
今3人いるんだから攻撃を緩めちゃだめだよ。」
ルミク「ねぇ…
それってみんな違う動きをしろって事?」
ユリト「おぉ!正解!」
ユリトは感心したようにパチパチと拍手をする。
正解しても無理でしょ。
私の魔力と意識、中間に魔術陣、最後に人形があって初めてこの魔術は成立する。
そして人形を動かす為には、より明確な動きを意識と魔力に乗せて人形に送らなくてはならない。
常に人形と私は繋がっている訳で、言うなれば思考と行動を全く別の動きにしなくてはならない。
右手を上げるとしながら上げずに左手を上げるような物だ。
ユリト「それが出来れば一個小隊相手に出来るぞ?」
確かに出来れば絶妙な連結をする敵程、厄介なものはない。
私が苦虫を潰したような顔をしていると、ユリトはにやりと笑い出来れば国直部にも入れるぞと言う。
ルミク「やる。」
ユリト「頑張れ。」
ユリトはカラカラと笑う。
何か釣られたような気もするが、私には不利益はない。
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