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ユリト「あれっ?陛下は?」
入ってすぐに目に入るはずの椅子に陛下の姿が無かったからだ。
「陛下はジェシエル王女に国体論を説かれている。」
俺の凄い不謹慎な質問に一人の大臣が誠実に答える。
昼近くになるんだけど、まだやってんのか。
まぁ俺としてはジェシーに会わなくて済むが。
「御呼びになりますか?」
玉座すぐ下にいる上級兵士が聞いてきた。
あそこの警護は兵士の中で最も憧れと責任がある。
ユリト「ああ~!いい!呼ばなくて大丈夫です!」
俺はブンブンと手を振って呼びに行こうとする兵士を止める。
呼んで一番最初に来るのは、ジェシーだって分かってるからな。
「休暇は楽しめたかな?」
さっきから視線感じると思ったら…
ユリト「ジュアリー当主。
いらしてましたか。」
ログスとルミクの父親であり、六大貴族土の当主。
そして貴族主義者の筆頭の人物。
「できの悪い息子どもは粗相がなかったかな?」
ユリト「ええ。ありませんでした。
さらに力を付ければ国外にも通用する能力を持っています。」
「ほう…それは結構。
だがその力を正しい事に使わなければ、宝の持ち腐れと言うものだがな。」
ユリト「必要な力とは時代によって変わっていきます。
権力の時代は終わりつつありますからね。」
「…君は私に挑戦状を突きつけているのかね?」
ユリト「そういう訳ではありません。
権力によって世が平定した時代がある事を証明に権力も正しい力です。
ですが力に溺れればたちまち間違った力になります。
これは能力による統治も同じことです。」
「では君は再び貴族統治の世界がやってくるというのかね?
私にはそう言っているように聞こえるが?」
ユリト「おそらく二度と来ないでしょう。
これから貴族という身分は衰退していきます。」
衰退という単語を聞いた途端に目がギラリと光る。
「貴族が貴族でなくなると?」
ユリト「いいえ。
貴族と庶民の境がなくなるのです。
それもごく当然のように。」
「君は我々貴族をとことんけなすのだな!」
「やめろ。」
王の間に響く低くゆっくりな威厳のある声。
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