叛逆の狼煙

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しかし私の決意は2人の言葉で簡単に揺れてしまった。 「ウェル。頼む… 戻って来てくれ。 お前を失いたくない…」 「ウェルお願い。戻って来て?」 私は初めて私にお願いする姿を見た。 なんで?どうして? 「ユリト殿もお願いします。 どうかウェルを除隊して下さい。お願いします。」 そう言って頭を下げる両親。 何故そんなに必死になっているんだ? ユリトも狼狽していた。 ユリト「あーっと… その事については私は介入しかねます。 除隊してもマラサード家に帰属するかはウェル本人の自由ですからなんとも…」 「いえ。せめて除隊だけでも…」 なにがしたいんだ? 戻したいのか戻らなくてもいいのか全く分からない。 「私たちにはもう変えられないんです…」 2人が帰り際に言った言葉だ。 何がなんだか分からない。 ユリトは貴族政に戻った時の事を考えて言ったんだろうと言う。 貴族政に戻る。 これはもはや反乱を意味している。 今実力政であるのは現国王が強力に推進して成した改革だ。 つまり貴族政に戻ると言う事は国王の意に反する事なのだ。 そして実力政の象徴。 国直部は解体され、見せしめやまた反乱を起こされないよう隊員を残らず処刑するだろう。 その時に除隊していれば、まだ助かるかも知れないからせめて除隊だけでもと言う事だろう。 だがユリトが世界から居なくなったら、私もきっと消えるだろう。 だからその時まで一緒に居るつもりだ。 ユリト「必死…だったな。」 客室に残された私たち。 ウェル「分かってる… でも辞めない。」 ユリト「言うと思ったよ。」 ユリトは呆れたように笑い私の頭をポンと叩く。 ウェル「ありがとう。」 ユリト「さぁ。 任務が残ってるぞ。 多分飯は片付けられてるからな。」 ウェル「そうだな。」 私たちはそのまま馬車庫に向かった。 いつかはみんなで笑い合いたいな。 その時はユリトも私もソティー達も両親もみんなで…
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