第壱幕 発見(スカウト)

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『ハァ─ハァ─』 夜の森。 まったき月の明かりが森の隅々まで照らしていく。 何かに追われるようにして、雪深い森を駆け抜ける男が一人。 しかし、彼の表情に恐怖という文字はない。 『ははは!これは凄い!これは凄いぞ!』 狂気の歓喜が彼の全てを支配している。 雪を蹴散らし、掻き分けていくように走る。 舞い上がる雪の飛沫が月光に輝く。 彼の息は白く、その肌も透き通るように白かった。 やがて男は走るのを止めた。 『ついに私は見つけた……ふふふ 来い!化け物! 私は逃げも隠れもしない!』 男は振り返り、薄明るい薮を睨みつける。 シュン 一筋の光が薮から伸びたかと思うと、それはあっという間に男の大腿を貫いた。 『ぐおおぉ』 男の悲鳴が森の静寂を掻き消した。 しかし、狂気はそれさえも笑いに変える。 音もなく彼は雪原に倒れた。 流れる血は雪を赤く染めていく。 彼は大腿を押さえていた右手を月にかざした。 その手は鮮血で、やはり赤く染まっていた。 『神よ!私を讃え給え! 私は神に創られし桃源郷を見つけたのだ!』 彼のその手は震えながら天を仰いだ。 その時、彼の黄金色の髪が月光で光ったかと思うと、同じ色の髪を持つ少女が茂みの闇から現れた。
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