85人が本棚に入れています
本棚に追加
『お前は何だ?どうやってここに来たのだ』
少女は陰影のつけた顔を、さらに凄みを付けて問いただした。
『くくく……、私はイギリス清教の者』
彼は不気味に尚も笑いながら言った。
ふらふらと彼は立ち上がり、少女を見据えた。
『殺すなら殺すがいい。
しかし、私が死んでもこの功績は後世まで讃えられるだろう』
彼は目を閉じ、淡々と続けた。
『私の名はロイド・クロムウェル……
魔法名、Oxalis152!(我が身に幸あれ)』
突然、彼を中心に黄金色の魔法陣が出現した。
少女は警戒し、半歩後ずさった。
『月に代わりし女神セレーネーよ!
月光照る我が身に最大の加護、最大の罰を与えよ!』
彼は叫ぶように詠唱した。
すると空けた木々の間からまばゆい程に月光が差し、男を神々しく包み込んだ。
そして彼はにやりと笑う。
次の瞬間、轟然とした爆音が大地を駆け巡り、森に閃光が走った。
くすぶる炎がゆらゆらとオレンジ色に森を照らし出している。
先程の爆発でいくつかの木々が薙ぎ倒されてしまい、森にぽっかりと穴が空いた形となった。
少女はその爆心でただ一人立たずんでいた。
爆風で雪はもとより地面はえぐられ、術者の遺品らしきものが散らかっている。
『紫様、ありがとうございます。
助かりました。』
そう少女は何もない場所に向かってつぶやいた。
すると、その空間が歪んだかと思うと、そこに裂け目が入り次元が開いた。
そこから長い金髪を持つ少女が現れた。
『全く……、生け捕りという方法が思い付かなかったのかしら』
最初のコメントを投稿しよう!