第壱幕 発見(スカウト)

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『お前は何だ?どうやってここに来たのだ』 少女は陰影のつけた顔を、さらに凄みを付けて問いただした。 『くくく……、私はイギリス清教の者』 彼は不気味に尚も笑いながら言った。 ふらふらと彼は立ち上がり、少女を見据えた。 『殺すなら殺すがいい。 しかし、私が死んでもこの功績は後世まで讃えられるだろう』 彼は目を閉じ、淡々と続けた。 『私の名はロイド・クロムウェル…… 魔法名、Oxalis152!(我が身に幸あれ)』 突然、彼を中心に黄金色の魔法陣が出現した。 少女は警戒し、半歩後ずさった。 『月に代わりし女神セレーネーよ! 月光照る我が身に最大の加護、最大の罰を与えよ!』 彼は叫ぶように詠唱した。 すると空けた木々の間からまばゆい程に月光が差し、男を神々しく包み込んだ。 そして彼はにやりと笑う。 次の瞬間、轟然とした爆音が大地を駆け巡り、森に閃光が走った。 くすぶる炎がゆらゆらとオレンジ色に森を照らし出している。 先程の爆発でいくつかの木々が薙ぎ倒されてしまい、森にぽっかりと穴が空いた形となった。 少女はその爆心でただ一人立たずんでいた。 爆風で雪はもとより地面はえぐられ、術者の遺品らしきものが散らかっている。 『紫様、ありがとうございます。 助かりました。』 そう少女は何もない場所に向かってつぶやいた。 すると、その空間が歪んだかと思うと、そこに裂け目が入り次元が開いた。 そこから長い金髪を持つ少女が現れた。 『全く……、生け捕りという方法が思い付かなかったのかしら』
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