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その問い掛けに少女は答える。
『申し訳ありません、紫様。
私はそんなつもりじゃなかったのですが……』
そう言って彼女はひび割れた地面に目をやる。
『侵入者は一人だけかしら?』
歪みから紫と呼ばれる少女は地にゆっくりと舞い降り言った。
『そのようです』
受け答えする少女は、紫と呼ばれる少女に対し敬服の念を持っているようだ。
『藍、急ぐわよ。
結界は深刻なダメージを受けているわ。
早く修復しないと大変な事になる……』
『御意』
二人は消えるようにしてその場を去った。
彼女達は微かに点滅する魔法陣の跡に気付かなかった。
それはまるで、ミツバチの餌の在処に仲間を導くサインのようにも見えた。
しばらくそれは点滅していたが、やがて何もなかったかのように消滅した。
まだ雪の深いの満月の夜の事であった。
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