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当たり前か、そんなもの現実である訳がないしあった訳でもない。
「はぁ…………」
体ではなく心の疲労で溜め息を吐く、自分の中の困惑と混乱を吐き出した気がした。
斎藤は気を取り直して廃墟のような部屋を出る。
案の定、目の前の光景は廃墟のような廊下だ、いやもうすでにここは廃墟であっているだろう。
自分の情報量の少なさに急かされ急いで歩を進めるべく前を見た時、何かが聞こえた。
音の感じは足音だが思いの外に小さい。
犬か何かだろうか? と思考した時、目の前の曲がり角から出てきた。
巨大なオオカミだ、数は三匹、自分の予想はあながち間違ってはいなかったようだがこれは外れて子猫がきてくれた方が良かった。
こんな状況に陥れば誰だってそう思うはずだ。
人と同じぐらいの大きさのケモノに牙を剥かれているのだ、まさに恐怖に襲われて身がすくむ思いだ。
────今、目の前に選択コマンドがあるとしたら“逃げる”の一拓だったろうな。
オオカミとエンカウントして五秒、即座に背を向け走り出した。
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