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────やった! 何も考えずに走っていたのだからこの状況は上々だ。
このまま逃げ切ろう、そう斎藤は思考する故に頭の片隅に“本当に逃げ切れるのか?”という思考が過ぎる。
だが今は極限的な状況だ、逃げ切れるか、逃げ切れないか、どっちにしろ今は走るほかないと自分を叱咤した。
「はっ、はっ、はっ……」
息が上がる、足が攣りそうだ。
逃げ出してから最初から必死で自分が出せるトップスピードを出し続けている結果だ。
今にも諦めて楽になってしまいたくなる。
楽になって全て手放して解放してしまいたい。
ずっと逃げないといけないと思うと足が馬鹿みたいに重たくなる。
────もう、いいかな……
決心が付いてしまった。
諦めてしまった。
もう後戻りは出来ない。
後ろを振り向けばそこまで子供オオカミが迫っている。
子供オオカミは距離を詰め飛び掛かって来る。
痛いだろうな、苦しいだろうな、辛いだろうな、悔しいだろうな、空しいだろうな──
──でもまあ、いっか……
俺は諦めた。
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