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「せんせ……っ」
目線を合わそうとかがもうとした瞬間、不意にぐいっと腕を引かれ瑞穂は足元のバランスを崩した。
すとん
と、うまい具合に有明の懐に着地する。
「せ、先生……」
コトリと、手にしていた有明の携帯が床に落ちた。ライトが伏せられ、また闇が二人を包む。
鼻先に触れる、有明のシャツの襟。
なんだかむず痒くて、瑞穂は身体をよじった。
衣擦れの音が、静かな中、目立って聞こえる。
すると今度は額に落とされる柔らかな感触。
なんでだろう、今までだって何度もされてきたのに。
ただの額へのキスが妙に生々しい。
とくん
とくん
お互いの心拍も、明るい場所にいる時より、ずっと近く深く感じる。
とくん
とくん
湯上りの身体がもっと熱くなって、すっかりのぼせてしまいそう。
ひんやりとした有明の指先がくいと、そんな熱っぽい瑞穂の顎を持ち上げた。
そのまま、そっと唇をなぞっていく親指。
ゆっくりと、その位置を確かめ、目印を着けるように。
そして、その目印めがけ、先ほど額に感じたものと同じ感触がゆっくりと降りて来る。
暗闇だから、目を閉じることなんてないのかな?
なんて、とぼけたことを考えながら、瑞穂は有明の唇を受け止めた。
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