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カタッ…
カタカタカタッ…
吹き付ける風に、教室の窓が小刻みに揺れる。
広がる重々しい曇天からは、今にも雨がにじみ出しそうだ。
「瑞穂ーー!」
お馴染みの声に呼ばれ、瑞穂は振り向く。
「あ、布津。
どうだった?」
答える瑞穂のそばには、有馬、深江も座っている。
「うん。
やっぱ明日の練習はなしって話だったわ。」
「あ、やっぱり。」
「さすがにね。」
教室には、もう瑞穂たち以外に生徒は残っていない。
終礼の後、皆、蜘蛛の子を散らすように帰ってしまった。
無理もない。
学校周辺の地域には、すでに強風注意報が発令されている。
大型の台風が接近しているのだ。
ホームルームでは担任が、出来るだけ一人で下校しないこと、寄り道せずにまっすぐ帰宅することを散々念押ししていた。
その後、金曜日ということもあり、部活をしている生徒たちは各部室に集められ、土日の練習についての連絡が行われていた。
「えー、サッカー部とかはわかるけど、バスケは室内じゃーん。
雨も風も関係ないのにー。」
深江が能天気に言う。
「あほか。
学校まで来るのが無理だっつの。」
「あ、そっかー。」
布津と同じ方向の瑞穂は、一緒に帰ろうと、バスケ部のミーティングが終わるのを教室で待っていた。
有馬も深江も、どうせなら途中まで連れ立って帰ろうと、一緒に待ってくれていたのだ。
「結ちゃん、駅までは一緒だけど、その後どうするの?
ひとりだけ逆方向だよね。」
「あ、うん。結は平気ー。
さっき親に電話したら駅まで迎えに来てくれるってー。」
「そっか。良かった。」
「てか、台風とか。
まじうざいし。」
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