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ドアノブを持ったまま、有明は考える。
「そうだ。」
何かを思いついた声。
瑞穂もその声に顔をあげた。
とは言え、相変わらず視界は闇に埋め尽くされている。
「瑞穂さん、俺の携帯をドアの隙間から入れるからその明かりで出てこれる?」
「え?」
有明はそっとドアを数センチ開け、その隙間から携帯を持った方の手を滑りいれると、合図するように左右に振って見せた。
小さな明かりだが、闇の中だけによく目立つ。周囲もそれなりに照らされぼんやりと視界も開けた。
「は、はい!
それがあれば大丈夫です!」
瑞穂はすっくと立ち上がると、ゆっくり明かりへと近づいていく。
「せ、先生、絶対覗かないでくださいね!」
「……覗かないよ。
……どんだけ信用ないの、俺。」
苦笑する有明に、瑞穂も自意識過剰だったかと照れ笑いを返す。
「ありが……」
有明の手に握られた携帯に手が触れた、その瞬間……
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