聡史

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「ちょっとトイレ。」 ふらつきながらも立ち上がってお手洗いに向かう亜以子の背中を見つめていると、聡史が戻って来る気配を感じた。 「亜以子は彼氏と上手くいってないのかな。」 私の呟きを、聡史が聞き逃さずに応えた。 「ホストだってさ。」 苦労してるみたいだ、と言う聡史は無表情だ。 きっと亜以子以外からも、界隈で彼氏の良くない噂を聞いているんだろうなと思った。 人の事に興味を持った事がなかったから亜以子の事も知らなかったけど、今ならその気持ちも何となく分かる気がした。 「水商売の男は苦労するぜ。」 聡史が意地悪い顔で言う。 「じゃあ聡史と付き合う女の子は大変だね。」 私がわざとそう返すとチッと舌打ちした。 「駿、だよ。」 「駿君は水商売の男じゃないよ。」
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