内宮さん

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駿君と想いを確かめ合ってから怪我が完治するまで二人で出掛ける事が殆どなかったから、今日は久しぶりの外出だ。 と言っても、駿君の大学の中を散歩がてら歩くだけだったが今の私にはそれだけでも気恥ずかしくて嬉しかった。 以前は人目が気になって、駿君の真意が図れなくて気も漫ろだったけれど、今日はのんびりと秋の散歩を噛み締めていた。 「美佳子さん。」 駿君が甘く耳元で囁く。 チラリと見上げると、ちょっと座ろうかとベンチを指差した。 ベンチに座っても私の腰に手を回したままの駿君は、今まで以上に優しくて、そしてまるでイメージ上のイタリア人みたいにベッタリくっついて離れない。 恥ずかしくないのかな、と見ると私の方を見て蕩けそうな笑顔を浮かべていた。
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