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俺は人を殺した。といっても、証拠はばらばらに捨ててしまった。
鍵を握るのは、俺と殺された者のみ。
死人に口がなくて本当によかったと今でも思う。お蔭で俺はこうして、今も平穏無事に生きている。
人を殺すのなんて、至極簡単なことだったのだと、やった後に知った。とはいえ、二回もしたいものではない。
あのときだって、やむを得なかったから殺したまでだ。
――あのとき。青白い頬に、閉じた眼に、乱れた髪に、狂い咲きの桜吹雪が降り懸かるのを、俺は心底美しいと思った。
だが、それだけだ。その後は、閉じこめてしまった後は、ただの死体。
もう二度とあの顔を見ることはない。見たくもない。
もう、やめよう。俺はこの話を蒸し返したくない。一度闇の底に葬り去ったことは、掘り返してはいけないのだ。
もし、無理に蒸し返そうとするやつがいるなら、俺はそいつを殺すのも厭わない。
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