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「ん……」
差し込んでくる光に、灰猫はゆっくりと目を開ける。
「起きたかよ?」
やさしい声がして顔を上げると政宗が微笑んでいた。
「まさむ――っ」
身体を起こそうとして、下腹に走った痛みに顔を歪ませた。
それを見た政宗が、眉をひそめる。
「痛かったろ……。
ごめんな……」
ぽんぽんと頭を撫でてくれる。
「謝らないで……」
まっすぐに見つめて灰猫は首を振った。
「私、今凄く幸せ……」
「灰猫……」
微笑む灰猫を政宗は抱き寄せた。
一つの布団で互いの体温が一つになる。
この気持ちを例えるなら、幸せ以外にないだろう。
――早く政宗と雪が見たい……
まだ来ない季節に心を踊らせながら、灰猫はそっと目を閉じた。
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