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朝食を食べ終わってからは少し時間がある。
冬弥と直紀は、あの後球技大会の話で再び盛り上がり、二人して野球部員のところへ御教授願いに行った。
本来なら俺もそれに着いていくのだろうが、今回の俺は違う。
冬弥達の誘いを断り、俺は雅俊を散歩に誘っていた。
雅俊が俺の左側を、俺に沿うように歩く。
そのスペースは握り拳一個分くらい。俺と雅俊の絆の積が窺えた。
やがて俺は平然を装い雅俊に話かける。
「なぁ、少し真面目な話をしてもいいか??」
「ふっ、ならいつもは真面目じゃないのか??」
雅俊は悪戯に返事をする。
しかし、その後には冗談であることを付け加えていた。
先ほども言ったが、雅俊は誰にでも優しくて、相手の悩みや相談に対して心身に対応してくれる奴だ。
だから俺は、稀にではあるが彼に相談事を持ちかける時がある。
雅俊は言わば、俺専属のカウンセラーみたいなものだった。
その反面、俺は雅俊に対して罪悪感を覚える時がある。
空気というのだろうか、何だろうか。
言葉では言い表せないが、俺は冬弥や直紀に真面目な話をしたくなかった。
できるなら、ずっとずっと馬鹿をしていたい。
その感情を雅俊にも抱いているのだが、相応順から言わせればというか、雅俊の性格に甘えてしまった俺はこうして相談に乗ってもらっている訳である。
「その、カノンについてなんだ」
俺の気持ちを汲み取ってくれている雅俊にとっては、冬弥や直紀に対する考えもお見通しなのだろう。
俺の言葉に雅俊は何の疑問も持たずに納得していた。
そして、雅俊は俺の言葉を代弁する。
「どうしたらいいか分からないんだろう??」
「あぁ……中学の時までは確かにメンバーの一員だったのに、高校になって距離を取られるなんて誰が思っただろうな」
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