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やがて、ホームルームの鐘がなったことに気付いた俺達は、慌てて教室に向かい、それぞれのクラスに入っていくのだった。
放課後。
俺は予定通りに音楽室へと足を運んでいた。
音楽室は、月曜日から土曜日の六日間を軽音楽部と吹奏楽部が混同して交互に使用しているらしい。
そして、今日は奇遇にもカノンが所属する軽音楽部の使用日だった。
「うわっ、すげぇ音だな……」
俺はあまりの衝撃に声を漏らす。
今、こうして音楽室の扉の前に立っているだけで腹に響き渡る重低音。
ドラムを中心にしたその音色は、俺の心に何かを語りかけてくるような気がした。
それは元気が出てくるような力強い曲調で、その曲は、俺が持っているCDの中にもしっかり入っていた。
それにしても、こうして改まってみると緊張が緊張を呼ぶ。
具体的には自分の速まる心臓の音に、更に心臓が活発化している気がする。
「こんにちわっ──」
やがて、俺は何度か悩みながらも扉を開けた。
しかし、曲が鳴り止まぬままに中に入ろうとしたのが悪かった。
音楽室の中に響いていた音が、先ほどまで俺が聴いていた場所とは比べものにならなかったのだ。
せき止められていた音が、出勤ラッシュ時にできる人集りの様にばたばたと廊下に溢れだす。
それに気付いた俺は慌てて開いていた扉を閉めた。
しかし、その小さな変化にも、音楽室に慣れてきっている部員が気付かない筈もなく、少し経つと音は止み、俺は見せ物のように扱われることとなった。
つまりは完全アウェイ状態だ。
「郁……椎名」
「何、知り合い??」
「あっ、はい……」
そこにはカノンの姿がしっかりと在った。
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