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俺が来たことに気付いたカノンは肩に提げていたギターを置き、マイクスタンドにかけていた手を解く。
そして、先輩らしき女生徒に短くそう答えると俺の下へと近づいてきた。
しかし、カノンは駆け寄ってきた途端、勢いそのままに俺の手を掴んで音楽室を跡にしていた。
「……何か用??」
音は完全に不機嫌だった。
不貞腐れているのか、頬を小さくを膨らまし、口を結わえたかのように閉じながら視線を俺のから外す。
「いや、急に来たりしてすまん。でも、音はメールを送っても返信してくれないだろ??」
カノンの反応はない。
しかし、俺は気にせず続ける。
「だから、ちょっと気になって見にきたんだ。悪かったか??」
「……別に」
縋りつく島もない。
何故かカノンとは高校に入ってからこんな状況が続いていた。
理由は分からない。
しかし、さっきも言った通り、メールをしても無視され、話題を振っても当たり障りのない返事が返ってくるだけ。
出会った当時から一言一言に棘を持っていたのは事実だが、高校のカノンは別ものだ。
「……何か俺、悪いことしたか??」
「したわね」
「そうじゃない。……何でカノンは俺達を避けようとするんだ??」
やがて俺は思い切って聞いていた。
何故、カノンが俺達を避けているのか。
その理由を俺は知りたいのだ。
しかし、カノンの反応が鈍っていた。
視線を四方に散らばらせ、困り果てた表情を浮かばせている。
カノンは確実に動揺していた。
「べっ、別に何もしてないわよ」
「嘘だ」
「嘘じゃないわよ!!私がバンドで熱くなってるから椎名と関わってないだけ」
「嘘だ」
カノンの言葉に俺は頷かない。
そんな筈がない。
カノンは見た目はがさつそうだが、何かに集中したからといって何かを欠落させたりしない。
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