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とても忠実で、特に友人関係は大切にする筈がない。
「なら、何だって言うの!?私が何を嘘を吐いてるって言うの!?」
「だから、それが分からないから聞いてるんだろ??」
カノンは声を荒げるが、俺は動揺することなく平然とそう返す。
「……もう、私に関わらないで」
すると、カノンはそう小さく吐き捨て、踵を返し音楽室へと戻ろうとする。
その時だった。
俺は無自覚な行動をとっていた。
「――!!」
視線と視線が重なりあっていた。
俺がカノンの顔に手を宛て、面を切られないようにしたからだ。
そうでもしないと、きっとカノンは話してくれない。
カノンは悪足掻きとばかりに身動ぎをして抵抗する。
しかし、その身体には力がなかった。
「やっ、はっ、離して!!」
「少しでいいから聞いてくれ……」
「ふざけないで放して―――!!」
「カノン!!」
次の瞬間、俺はカノンに向けて叫んでいた。
それに驚いたのかカノンの動きは止まり、俺と視線がここぞとばかりに重なり合う。
「いいか、カノン。俺の目をちゃんと見てくれ。」
その言葉にカノンは、まるで泣き疲れた赤ちゃんの様にに大人しくなり、今までに見たことの無いような、トロッとした瞳が俺を捉えていた。
「何でだよ……何で俺を業と椎名って呼んだりするんだよ」
「……」
「何で、俺達を避けるんだよ……」
悔しさが滲んでいた。
それは音の気持ちを理解出来ない俺の感情。
そして、何も話してもらえないことの悲しさが大きくなり言葉に変わっていた。
「……んな……をしないでよ」
「えっ……??」
「そんな顔、しないでよ!!」
そう叫ぶとカノンは俺を突き飛ばし、音楽室とは違う方向へと消えていった。
そして俺はといえば、カノンを追うことはなかった。
それは急なこと過ぎて何も出来なかったからだ。
でも、それはもしかしたらカノンからの拒絶に絶望していたからなのかもしれない。
不意に空を見上げる。
空は紅に染まり始め、地平線から徐々に黒く塗り始められている。
それだけの事なのに、一日が終わると思うと俺は不快で仕方なかった。
最後に追い討ちをかけるように風が吹いた。
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