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「よし、いくぞ??」
冬弥の言葉に俺と直紀は頷く。
冬弥がバルブを回す。すると、勢いよく水口が開き、長い間、溜められていた水が止めどなく吸い込まれていった。
現在、俺達はプールの管理室にいる。といっても、季節はまだ春。プール開きにはまだ時間があり、勿論夜中に授業が行われている訳もない。
要するに非公認の、度が過ぎた『悪戯』なのだ。
カノンと雅俊はといえば、俺達が管理室を物色している間に監視についてもらっている。
実行犯は冬弥、いざという時の補佐が俺と直紀になっていた。
そもそも、一足早いプール開きを企てたのも冬弥だった。
「俺はプールに入りたい!!夏まで待ってられるか!!」
とか何とか。少し暖かくなってきたからといって、冬弥は直ぐにこれだ。
でも、そんな冬弥の意見に俺達が逆らわないのも、俺達が心の何処かで、その馬鹿を許してしまっているからだ。
「よっしゃあ!!水も全部抜けたことだし、始めるか!!」
やがて俺達は裸足になり、モップ片手にプールサイドに並ぶ。
プールの中はこびりついた苔で緑色に染まっていた。
当たり前だ。プール開きを先にしてしまう訳なのだから、プールが清掃されていないのも当然だ。
「はぁ……何でこんなことやってるのかしら……」
カノンが面倒くさそうに言う。それに雅俊が「仕方ない。冬弥が一度言い出したら、それは最早、決定事項だ」といって慰めていた。
「ちくしょう!!早くプール入りてぇな!!」
「何だよ直紀、お前まで入りたいとか言い始めたのか??絶対寒いだろ」
「んなの関係ねぇよ。要は楽しめればいいんだよ!!」
「……ふっ、んだな」
直紀が言うと本当にそう思える気がした。
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