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「よぉ、なんだ何だ??帰ってきたかと思えば、そんな湿気た面しやがって。また、カノンのことか??」
そんなに表情に出ていたのだろうか。
直紀は敢えて調子を崩さないよう、普段通りに話しかけてくれる。
それは俺にとってなんともありがたい配慮で、そうしてもらう事によって俺は自分を保つことが出来るというものだ。
「あぁ、正にそのことだよ」
「そっか。まぁ、俺達も付き合いが長いだけに、正直なとこ寂しいって気持ちはあるよな」
テーブルにあるサラダせんべいを一口頬張りながら、直紀はぼんやり話し込む。
「驚かないだな」
「今更、お前が考えていることなんざ、たかが知れてるよ」
直紀にサラダせんべいを差し出され、俺も一緒になって頬張る。
部屋にはその咀嚼音しか響いていない。
直紀と一緒に居て、こんなに静かになるのも久しぶりだ。
「そもそもカノンとお前は、いつからの付き合いなんだ??」
何気ない口振りで俺は訊ねていた。
聞いたこともなかった。
俺が知り合った中学時代にはもう、直紀達はメンバーとして成り立っていた。
だがら俺は、今まで中学校からの仲としか考えておらず、その前からの付き合いという考えが些か欠落していた。
そう、何も俺が知り合った瞬間からメンバーとは限らないのだ。
それならば、俺なんかより直紀の方がカノンについて詳しいはずだ。
「あぁ、俺達は小学三年生からの付き合いだよ。まぁ俺がメンバーに加わったのが一番最初で、それからカノン、雅俊の順番でメンバーに加えていったって訳だ」
そうなると、直紀をチームに勧誘したのは間違いなく冬弥だろう。
さすれば直紀はカノンとの付き合いで換算すれば冬弥と一緒なわけだ。
「カノンって、出会った時からあんな性格だったのか??」
「あぁ、すっかり変わらんよ。今も昔もさ」
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