3人が本棚に入れています
本棚に追加
*
私の両親はロックバンド歌手。
日本中は勿論、世界各地を堂々たる風格で練り歩くほどのスター歌手だった。
そのため私は転校の連続で、それはさながら渡り鳥のようだった。
でも私は両親のことが大好きで、そんな生活に文句を言ったことはなかった。
そんな私に名前をくれたのはお父さん。『音』と書いて“カノン”と読むその名前を、私は大好きだった。
それでこそ、人気歌手であるお父さんがくれた名前だ。
同時に誇らしくもあった。
そんなある日だった。
お父さんが大事な話があると言って、私は居間に呼び出した。
「カノンにはいい子になってほしいんだ」
「何で??もしかして、私って悪い子??」
涙ぐむ私に、父は小さく笑って頭を撫でてくれる。
その手はとても優しくて、私はそれだけで安心してしまう。
「違うよ。カノンにもっといい子になってもらうために、母さんと話あって決めたんだ」
「えっ??それって―――」
お父さんは微笑みながら頷く。
「今度からは、もう引っ越しをしないと約束するよ」
それは、私に決まった場所を持って生活してほしいという両親の願いだった。
「本当??本当にもうお引っ越ししなくていいの??」
「あぁ、一軒家を買うことも決めてるんだよ。何時だと思う??」
お父さんかの問題に、私は唸りながら考える。
しかし、いくら考えても答えを導き出すことは出来なかった。
「んじゃ、ヒント。今月は何がある日かな??」
「今月??……あっ―――!!」
それは私の誕生日だった。
両親はわざわざ私の誕生日に、祝の日を合わせてくれたのだ。
それがとても嬉しいかった。
幸せ二倍といったところか、私の人生最大の思い出になることは確実だった。
最初のコメントを投稿しよう!