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数週間後――。
私は六歳の誕生日を迎えていた。
そして今日は一軒家になった自分の家に行く日でもある。
朝早くから出かける準備をして両親の待つ居間へと向かう。
実際の所は楽しみで寝付けなかっただけだ。
居間へと辿り着くと、そこには両親が待っていた。
しかし、二人の顔は何故だか浮かない。
「……お父さん、お母さん??」
「ごめん、カノン。実は残念なお話しがあるんだ」
「えっ……」
「急に外国へと行くことになったの。いつも通り、遅くはならないのだけど、二三日はあちらに滞在する予定になりそうなの」
お母さんが本当に残念そうに経緯を話す。
いつもなら私もついていくだけなのだが、今回ばかりは違う。
家も新築され、誕生日を迎えた私が両親の仕事についていくということはつまり、楽しみにしていた今日という日が無駄にするということだ。
何せ飛行機の移動だ。
それも当然である。
「そんな、じゃあ誕生会は??新しいお家はどうするの??」
「……」
両親は口を固く結ぶ。
その反応に私は涙が零れる。
「ごめんよ、カノン。それに今日は一軒家を引き取ると、業者の人へ行ってしまったんだ。だからカノンにはお家で待っていてほしいんだ。叔父さんには来てくれるよう言っているけどね」
そう言いながら、お父さんは私を抱きしめる。
お父さんも辛いのだろう。
小さな体を抱きしめる大きな手は小刻みに震えていた。
やがて、両親がキャリーバッグを引き連れて空港へと向かっていく。
それを来てくれた叔父さんと見送り、両親のいない新築の家で誕生日をしてもらった。
しかし、胸に支えた骨が取れることはなかった。
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