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「ほらお前ら、口じゃなくて手を動かせ」
『へい、へい』
2
「いやっほい!!」
ザップーン――――。
「うおっ、冷てぇ!!」
途中で石鹸アイスホッケーが始まってしまったものの、何とか俺達はプールにありつくことができた。
水しぶきをあげプールに飛び込むと、やはり水温は低かった。
しかし、プール着に着替えるのも面倒くさいので、制服のまま飛び込んだこともあって、まだ救われているのかもしれない。
「おーい、カノンも来いよ!!」
「行くわけないでしょ??何で春にプール入んなきゃいけないのよ」
「慣れると気持ちいいぞ!!」
「そういう問題じゃないのよ!!それに……」
そこでカノンは口ごもる。
その反応で俺は気付いてしまう。
少なからずプール着を持ってきていないカノンがプールに入ったとすると、制服が透けてしまうのだ。
それは何があっても死守したい。何より、カノン以外が男子であることもあって、カノンは独り身なのだ。
しかし、直紀はそんなことお構いなしだったようだ。
「えい!!」
「へっ――いやぁあああ!!」
ザップーン――。
「あぁ……」
「ちょっと、直紀ってば最低!!」
「ははっ、知るもんか!!悔しかったら捕まえてごらん!!」
そう言って、直紀がプールサイドを駆け始めた。
カノンはといえば、直紀の言葉に本気で怒ったようで、鬼の形相で直紀を追いかけ始めるのだった。
それを見ていた俺と冬弥と雅俊は笑った。
「こらっ、お前ら何にやってんだ!!」
「やべっ!!」
懐中電灯が当てられていた。
その声はどうやら巡回員のものらしく、怒りたった様な声色で俺達に近づいてきた。
「おい、ずらかるぞ!!」
冬弥のかけ声と共に、俺達は予め準備しておいた退路から脱出を試みる。
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