Episode;Kanon

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やがて、直紀は俺の疑問に答えることなく、いつもの笑顔を見せると食堂へ行くように促すのだった。 こうして朝が始まっていく。 食堂/朝 「ひー、流石に混んでるな」 朝の食堂は人の数が多く、寮に住むほとんどの生徒が一定の時に食堂にくる為、時には座る席がなかったりする時がある。 だから朝食では間隔を開けずに、来た人から端に座るように義務づけられていたりする。 といっても、ある意味でいい交流のきっかけになるので、刃向かったり乱したりする奴も幸運なことにいない。 しかし、俺達の場合は刃向かわないにしろ、ある種の意味で違かった。 「おはよう」 お盆で運んできたご飯を食べず、一人座っている男子が背筋を綺麗に伸ばしながら俺達に声をかけてくる。 その周りに三つ、不自然に空いた椅子があった。 そして俺達は挨拶を返すと、不自然に空いていた席へと腰を下ろす。 これが俺達のスタイルなのだ。 俺達メンバーの誰か一人がいることによって周りが空気を読む。 いや、それが当然とみなされているのだ。 俺達は常に行動を共にしていて、それはまたくだらないことで話を盛り上げてしまうような、言ってしまえば学年に一人はいる学校の人気ものの集まりなのだ。 といっても、俺や直紀が人気ものになったのも、俺達の個性が認められた訳ではなく、それはきっと彼奴の性格による弊害のせいだ。 そして俺達に挨拶した彼もまた、俺達と同じステージに立たされた、彼奴の性格の弊害による被害者の一人だ。
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