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まーあれだな。死ぬな、これ。
暖かな風を運んでくる陽春。
生命の息吹を感じさせる深緑の森の中で俺の周りにだけ死の香りを運んでくるのは気のせいか。
とある森の中ーーー
鬱蒼と茂る場所にて
今、俺から数歩離れた場所で石でできた巨像がたたずんでいる。
しかもこのでかい石像俺にむける殺意が尋常じゃない。
まるで業火のような熱い殺気。
俺には今のところこの石の塊に殺意を向ける理由など皆無だがこいつにはあるようだ。
「今日はなんて厄日なんだ――」
今まで経験したことのない、恐怖に近い何かは、俺の足を竦ませる。
クソッ足が浮いてるみたいだ。怖いのか?俺は
端から見たらおかしなことだろう。
俺は巨像に殺されそうになっている
なぜこんな目に遭うのかって?
それは俺が人間で、奴が魔物という怪物だからだ。
ヴォオオオオオオオオアアア!!
意思を持った無機物が吼える。
これから俺の人生がこいつによって幕を下ろされるのかもしれない。
まだ始まったばかりなのにだ。
だったら、懺悔などではないが、少しここまでのいきさつを話してもいいのだろうか?
人は死ぬ前には走馬灯を見るというじゃないか。ああ、あれは確か――
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