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時はさかのぼること昨日。
とある校舎内の掲示板の前に一人の男の子がいた。
黒寄りの赤髪を耳の上まで短く切り、毛先が上を向いている。
身長は150cm半ばくらいか。
黒いタンクトップに白の短パン。
その男の子の他に掲示板の前に立つものはいない。
だが、人がいないというわけではなく遠くのほうで子供たちの快活な声がここまで届いている。
本当ならその男の子もその中に交わらなくてはいけないのだが、彼自身は全くその気が無かった。
「また教官にどやされるなぁ・・・ま、いっか」
男の子の頭は今の目の前にある事実に夢中でそれ以外は全て紙くずほどどうでもいいことなのだ。
掲示板の前に立つ赤髪の少年、今年で14歳になるアルフォード・マクティスはその掲示板に貼り付けられた一枚の紙を注視していた。
(先月の選抜試験はどうなるかと思ったけど、マルセルのおかげで助かった。
あいつにはちゃんとお礼を言わなくっちゃな!)
黄色の肌の顔がクシャッと崩れ、今まで我慢していた笑いが体全体を満たす。
まあ、俺が最初からちゃんとしていればこんなに合格を心配することなんて全然なかったんだけどな。
ガリムの野郎…と言葉が漏れる。
が、俺の勝ちだ。
思わず拳を握りしめ歓声を上げた。
「よっしゃあ!俺が勇者だ!ざまぁみろ!」
静かな校舎に響く絶叫ともつかない喜び。
それは誰もいない廊下を予想以上に反響し、驚いたアルフォードはあわてて口をつぐんだ。
一拍の沈黙、そしてもう一度アルフォードは夢じゃないことを確認するため、掲示板の茶色い紙に書かれた言葉を目に焼き付ける。
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