白昼夢

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「男の子って成長期が高校生になってからってこと、多いよね」 暑い夏の日に、ユキが僕のシャツを見ながら言う。 「袖、短くなってる」 確かに半袖の位置が去年より上がっている。 夏休みとは言え、部活をしている僕は制服登校する日も多い。 大学生のユキとも時間が合いにくく制服のまま会うことも少なくない。 ユキはバイト、僕は部活…。 「夏服、去年大きめだったから調度よくなったよ」 「ハヤト先輩も高二の夏休みで10cm伸びたでしょ、カズも同じかもね」 「……うん」 兄の名がうまく流せない。 こういうところがイヤだ。 「だといいけど」 中一の僕は平均より小さく華奢だったのもあって、成長期に育ちきった兄・ハヤトとはパッと見で似てなかった。 今では佐々木というよくある名前で、兄弟と反応をされる程度には似ている。 僕の不機嫌にはそれも含まれていた。
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