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夜に城を抜けだそうとしたことが以前に数回あったが、必ず見つかってしまうのだ。
それ程までに城内の警備も特に夜は厳しいものであり、部屋から出ただけでも見回りの兵士からどこへ行くのかと尋ねられ、少し居心地も悪かった。
しかし考えてもわからないものはわからないものでベニは諦めるようにベッドに潜り込み、目を閉じた。
その時だった。
ヒュウと暖かな風が部屋に入ってきたのだ。
それから、スタッと誰かか降り立ったような足音もした。
驚いてベニは起き上がるとそこにはスラリとした青年がこちらをじっと見つめていた。
「誰です?」
ぼんやりと見える顔は綺麗に整っているが、その表情は決して柔らかいものとは言えないが、戸惑いを隠し切れていないようでもあった。
「お前、どうしてここに?」
やや間を開けてから青年は恐る恐る言葉を切り出した。
まるでベニを知っているような口ぶりであった。
「どうしてと言われましても、ここが王家のお城です。王の娘である私がここにいるのは当たり前です。それよりもあなたは誰なのです?どうやってここへ来たのです?」
青年はゆっくりと窓に近づきながら指さす。
外からの薄い光で何となく認識できるくらいには青年の顔が見えた。
綺麗なエメラルドグリーンの瞳…。
そういえば夢の中の人と凄く似ている気がします。
ぼんやりとベニは青年の瞳を見つめていた。
「俺は窓から入った。それよりもお前がアラルニカ王国の姫なのか?」
コクンと頷くと青年はこちらの胸が締め付けられるような切ない表情を見せた。
「せっかく会えたのになんでまた王族なんかになっちまったんだよ、ベニ!?」
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