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「ベニ?どうしたんだよ、そんな確認するみたいな言い方。」
思わず夢の中で出会った青年の名前を呼んでいた。
そして、目の前にいる青年、ルタはそれに反応したのだった。
ベニの頭は更にぐちゃぐちゃに混乱していた。
あれは夢ですよね?
私、今も夢を見ているのでしょうか?
ぼんやりとルタに体を預けたままベニは目を閉じた。
鮮明に浮き上がるいつもの夢の中での景色。
ただ、夢の中のルタの顔はぼやけて見えないのだ。
力強いエメラルドグリーンの瞳だけがベニの瞳に映る。
やはり、今は現実であってアレは夢なのです。
しっかりしなくては。
夢と現実の区別もつかないなんて…。
そっと目を開け、目の前にいるルタの瞳を捕らえてから
「あなたの名前はルタと言うのですか?」
確認するように尋ねた。
「そうだ。お前、思い出したんじゃないのか?」
サッとルタの表情に陰が差していく。
「ごめんなさい。以前にどこかでお会いしましたか?」
ルタの力が弱まったのでその隙にそっと体を離す。
少し距離を置いてベッドに座りなおすと、ルタも横に腰掛けてきた。
「会っているよ。100年くらい前になるのかな、あれから。」
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