ある晴れた日の事でした

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10月2日(土)PM01:38 【第3区噴水広場前】 「遅いぞ!ユート!」 そう口を開いたのは、見るからにわんぱくそうな半ズボンを穿いた黒髪ロングな少女だった。 ただ少女と言っても彼女は今年小学二年生になったばかりだし、どこなく特別なオーラを纏っているのは一目瞭然だ。 身長はまだ120もあるかは解らないというのに、誰にも物怖じしないその態度はあっぱれとしか言いようが無かった。 ただ、彼女は無意識な事だろうから、それにこそ賞賛を与えるべきなんだろうけど。 と、思考をまとめ、少女が待つ噴水前まで辿り着いた少年は口を開いた。 「はぁ…はぁ………、……ごめん、葵。遅れた………」 「うむ、許す!」 ぎゅーっと少年に抱きついた少女は、ニヘラ、とにやけると、少年に向けて屈託の無い笑顔を見せた。 「はは………」 少年は、鷹佐御優翔は至極一般校、十津学園に通う高校二年生だった。 髪型だってどちらかと言えば、地味で目立たない普通の黒髪。身長だってさほど高くもないし低くもない。 特別なのは、少年の人脈と次世代魔術であった。 とりあえず、そんな事はどうでもいいとして。 「葵」 少年、優翔は少女が握る手を柔らかく握り返しながら口を開く。 「今日は何がしたいんだ?」 「…………むー…」 ばっ、と抱きしめていた腕を放して優翔の手を握ったまま隣に立つと、彼女は満面の笑みを浮かべる。 「優翔と一緒だったら、どこだって嬉しい」 「………………ありがとな葵」 優翔はとりあえず歩き出し、商店街でもぶらつこうかと足を進める。 本日土曜日は学園も休みだったから、補習や勉強に充てたかったのはもちろんなのだが、仕事の何でも屋が立て込んでいた為に、最近葵と会う事ができなかった。 今日はその埋め合わせと言った所か。
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