ある晴れた日の事でした

12/29
前へ
/138ページ
次へ
残念な事に何でも屋に仕事は舞いこんでいないし、ちょっと気が滅入っていた所だったから優翔にとっても今日はありがたい日でもあった。 「なぁなぁ優翔、この前のテストでな、私は100点を取った。しかも苦手な国語でだぞ!」 「おぉ、やったじゃん」 「うむ!先生も誉めてくれた!」 「凄いな、葵」 よしよし、と繋いだ手を放して頭を撫でてやると、彼女は気持ち良さそうに笑い、そして再び優翔の手を握った。 「これで後100点を取ってないのはホケンタイイクとやらだけだ」 「ほ、ほけ…………、いまの小学生はそんな事をもう勉強するのか?」 「ん?そんな事?」 言ってみてから気がついたが、うん、確かにテストは無かったけど、運動をするときの筋肉の仕組みやら健康を習うのだって保健体育でやった筈だ。 別に体の作り、とかだけが保健体育じゃないもんな、と無理やり納得する。 「なぁ優翔、そんな事とはなんだ?」 「別になんだってないよ」 「む……………あの女には言うのにか?」 「いや、多分藍香さんにも言わないよ…………」 言えない。ていうか言ったらきっと怒られるだろう、と思いつつ話を早めに切り上げる。 「あ、ほら葵。アイスクリーム屋だ。好きなの買ってきていいぞ」 「ほんとか!?」 先ほどの話題はアイスクリームに負けて、葵の興味もそちらに向いた。 彼女は笑顔になりながら一目散にアイスクリーム屋に駆け寄っていく。 「気をつけろよー」 砕葉藍香、というのは鷹佐御優翔の親戚でもあり、学園のアイドル先輩でもあり、大切な家族同然の人物であった。 少しだけ茶色がかった髪を腰まで揺らして、前髪は可愛らしいピン留めでとめてある。 もちろん彼女は何をしても似合うし、大概が成功する。 しかし気取った態度はとらず、いつも三歩引いたような謙虚さを兼ね備えているのだ。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加