ある晴れた日の事でした

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そして、目の前でアイスクリームのどれを買うべきか悩んでいる少女は、高美伽葵。 聞きしに勝る、高美伽財閥の娘である。 どうして一般人である優翔と葵が、という疑問はもちろん出るだろうけど、それは何でも屋という仕事から来る巡り合わせとしか答えようが無かった。 高美伽グループの偉い人から仕事を受けて、数週間だけ葵を匿った事が全ての始まりだった。 「う~~ん…………」 「……まだ悩んでるのか?」 「……うむ。私が見る限りでは、『カラアゲケーキパラダイス』が良いと思うんだが……」 「………普通にバナナチョコな」 これ以上葵に任せたら危険だ、と判断した優翔はバナナチョコを2つ選択して購入。お金を払ってからクレープを受け取り、手頃なベンチを見つけて2人並んでそれを食べた。 「はぐはぐ…………これは……なかなか美味しいな………」 口をクリームだらけにしている葵の口を拭きながら、優翔は口を開いた。 「そういえば葵、お前今日はパーティーだろ?」 「ん、……んむぅ………そうなのだ。だから優翔、お前とはあと少ししかいられない」 本当に残念そうな顔をしながら葵はそう口を開いた。 優翔はどうして昨日に限って家に帰るが遅くなってしまったんだ、と遅れた原因を殴りたい気分だ。 「ごめんな、葵」 「なに、気にするな。こんなもの高美伽家のお勤めに過ぎぬ」 明るく、明るく彼女は笑顔を振りまく。 「確かに少し寂しいが、また明日になればお前に会えるしな!」 「葵………」 正直、彼女の考え方には驚かされることばかりである。 弱っちい自分には持っていないものばかりを持っていた。
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