ある晴れた日の事でした

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絶対強者が街を見張っている以上、目立った諍いは起きてはいないが、そんなものは、いつ起きるか分かったものではない。 もはや色々と限界なのだ。 「…………………」 くるっと角を曲がり、比較的に人通りが少なく、落ち着いた雰囲気の道を歩いていく。 センター街からは未だに騒がしいノイズや明るい光、街の活気が流れ出る。 「うぃ~~っす。来ましたよぉ、っと」 ダラダラっと足を引きずりながら喫茶『AYAKASHI』に入る少年。 綺麗な内装とは裏腹に、意外とハードボイルドな店長が営む喫茶『AYAKASHI』は、女性には人気の名店だった。 知るか、アホ。 「ん……………?」 と、そんな姿を見るやいなや、一人の少女が声を上げて少年を呼んだ。 「あっ、翼!こっちこっち!」 「あぁもうわかってっから、黙って座ってろ」 多少茶色がかりしているハーフツインを揺らしている少女は、気だるそうな少年──鷲宮翼が席に座るのを見ると、彼女の隣に座っていた少女に向けて、優しく「この人だよ」と口を開いた。 「あっ、あの……!」 「ん?」 「は、初めまして…………は、長谷川……夏奈でしゅ……」 第一印象は小動物だった。 気弱そうな外見に、およそ身長が小学生ぐらいしかない。 鷲宮にはこんな奇想天外な知り合いはいなかった。というか、元々交友関係は広くは無いのだ。 「………あぁ」 「あのね、『あぁ』とか無愛想なのよ。もっと翼は女の子に優しくしなさいよ」 活発な印象を受ける彼女は、幼なじみである藤田岬である。 色々と仕事の手伝いをしてくれてはいるのだが、口はうるさい。 「だぁあ!うっせぇな!」 「ひぃ!」 「ちょっと!長谷川さん驚いてるじゃない!」 「ひぅ!」 いや、お前にもな、とかツッコミつつ鷲宮翼はとりあえず大人しくする事にした。
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