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「よし……と。んじゃ、見つかったらこっちから適当に連絡すっから」
「は、はい……………」
「んじゃ」
ガタンと立ち上がり、鷲宮は机から離れていく。コーヒー代は基本的に鷲宮が払う事となっていた。別に頼まれてはいないが、男として当然だと思う。
「あ、ちょっと………!」
そんな鷲宮を見て岬はそばに駆け寄る。
「翼、今月お金無いんでしょ?」
「あぁ?るっせーな。こんぐらい何でもねーよ」
「いっつも払わせちゃ悪いでしょ、はい」
はい。
そういって彼女が差し出したのは1万円札。
これをいったいどうしろと。
「コーヒーがそんなに高いわけねーだろ?あぁ?」
「いいの!あんたはいっつもそうやって無理するから。ご飯代も入ってるよ」
「ちょっ、おいおい。お前一週間前だって」
「男が言い訳しない!」
「う………………」
鷲宮が口を塞いだのを見ると、彼女はニッコリと笑って1万円札を鷲宮の手に握らせた。
「じゃあよろしくね、翼」
「………………はいはい」
再び鷲宮は2人に背を向けて歩き出し始める。
この金は後で金庫にでもしまって保管しておこう、とそう決めると、喫茶店から一歩足を踏み出した。
目の前に広がるのは夏と秋の間の空、不思議な星達。
「あー……明日はアレか……んじゃ今日はたっぷりと探し回るかな」
簡単には見つからないのは理解できる。
中に何が入っているかなんて解らないが、鷲宮に申し込まれる仕事はなんだかそんなのばっかりだ。
警察にも、能力機動隊にも、生徒会にも頼めないような、そんな仕事。
多少のうざったらしさを感じながら、少年はブラブラと街を徘徊した。
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