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『へぇ……結構近いのね』
「は?」
『私第1区の4区寄りに住んでるの』
ふぅん、と鷲宮は納得した。
毎週のように渡される1万円札。
なるほど、第1区は富裕層が住む区域だ。
「あー、つか、じゃなんで、あんな普通の学園通ってんだよ」
『あ、はは、………ほら、私って能力弱っちいじゃない?』
「……………………」
…………そういやそうだった。
確か岬の能力は一番下のGランクだ。
流石に金持ちとは言え、入学できるかは殆ど能力によるのだし。
「……ま、人間次世代魔術だけじゃねぇさ」
『………うん』
暗い口調になってしまった彼女はとりあえず後でフォローしておくとして………
「んで、一体なんの用だよ」
荒く息をはきながら、鷲宮はそう口を開いた。
『えっとね、大した事じゃ無いんだけど、最近さ、どう?』
と、彼女は遠慮がちに鷲宮にそう尋ねた。
彼女の声はどちらかと好きな部類に属していたが、鷲宮が好きなのは彼女が笑っているときや、楽しい話をしている時の声で、あからさまに落ちた声は、好きであるが故に聞きたくなかった。
「最近って………、別に。元気にやってる」
『……そっ、か』
彼女と鷲宮の関係を今更語るのも、まぁどうかとは思うが、言うなればただの『元』クラスメート。しかも1ヶ月弱しか一緒のクラスにいなかったのだから、奇妙なものかもしれない。
鷲宮は、とある都合により彼女がいる学校に転入し、そしてとある都合により自主退学をした。
その間に、まぁ『何でも屋』として初めて請け負ったのが彼女からの依頼であり、それを機に、親交を深めていったのだ。
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