序章

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敏夫は勝之のすぐそばまで来ると立ち止まり勝之に言った。 「カッチャン。先に親父さんに焼香してしもたよ。和尚様も探してたよ。」 その所作や、声の抑揚、敏夫の表情が余りにも自然だったために、勝之は思わず、ほんの僅かだが、破顔して「わかった。帰るよ。」と、言って立ち上がり、敏夫と連れだって石段を下って行った。 「カッチャン。今年の彼岸桜はやけに赤ぇなぁ。」
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