序章
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「今年もシビが豊漁やな。」 勝之がひとりごちした時、石段を登ってくるもう一人の少年があった。 漁師街の子供らしく無駄な肉のついていない四肢は、それでいて逞しく、勝之と同じく船上を遊び場にして育ったために、既に一人前の漁師のように赤銅色に日焼けしていた。 少年は名を大田敏夫といい、年は勝之と同い年。 何故か勝之とは馬が合い、この街の子供達の中で、勝之が心を許すただひとりの人物だった。
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